はじめに
今日のデジタルヘルス・ケアは、病院のように安全で、スタートアップのように反復的で、政府機関のように説明責任を果たし、連合体のように協働できる組織によって提供されなければなりません。しかも、これらすべてを同時に満たす必要があります。この組み合わせを丸ごとカバーする既存の手引きは一つもありません。ソフトウェアチームにはアジャイルとプロダクトマネジメントがあり、公共部門にはGOV.UKとNHSのサービス標準があり、大規模な変革にはプログラム・ポートフォリオマネジメントがあり、医療システムには改善科学と厚みのある人材エビデンスがあります。それぞれは自分の領域では優れています。けれども、リーダーが実際に直面する問題は、自分たちの仕事が毎日、すべての領域にまたがっていることです。
本書は、こうした専門分野を、デジタルヘルス・ケア組織のための一貫した**仕事の進め方(ways of working)**としてまとめようとする試みです。手法を売り込むのではなく、トレードオフを正直に示すことを心がけています。
なぜ「仕事の進め方」に一冊の本が必要なのか#
多くの業界では、仕事をどう組み立てるかは効率の問題です。医療・ケアでは、それは同時に安全の問題(悪いプロセスは患者を傷つけます)であり、公平性の問題(狭く設計されたサービスは、最も必要としている人々を締め出します)であり、公費の問題(財源は納税者のもので有限です)であり、信頼の問題(人々は最も機微なデータをあなたに預けます)でもあります。そのため、仕事がどのように入ってくるか、どうトリアージし優先順位づけするか、チームをどう編成するか、変革をどう導くかといった日常的な判断も、一つの専門分野として扱うに値するほど重みを持ちます。
本書が扱う内容#
各トピックは、基礎(仕事の進め方とは何か、運用モデル、エビデンスに基づく意思決定)から始まり、仕事の流れ(受付、トリアージ、優先順位づけ)とデリバリーのライフサイクル(ディスカバリー、およびディスカバリー→アルファ→ベータ→ライブの道筋)へと進みます。続いて、提供の形態(プロダクト、プロジェクト、プログラム、ポートフォリオ、そしてERPという基幹)、仕事を担う人々(チーム構造、人員計画、人材戦略、組織開発)、変革とイノベーションの規律、パートナーシップと政府の現実を扱い、最後に測定と、上級リーダーが必要とする可視性を取り上げます。
どのトピックも同じ構成です。主張、医療・ケアにおいてなぜ重要か、中核概念、ベストプラクティス、医療の実践例、失敗パターン、成熟度モデル、チェックリスト、そして実在する情報源です。そのため、最初から最後まで通読しなくても、現在地を評価し、次に何をすべきかを決められます。
読み方#
まず第1部を読んで共通の語彙を固め、残りは参考書として使ってください。「仕事が多すぎて、選ぶ方法がない」のであれば第2部から始めます。「変革がいつも停滞する」のであれば、変更管理(トピック8.5)とイノベーションの段階的導入(トピック8.4)から始めてください。「取締役会には実際に何が起きているかが見えない」のであれば、トピック10.3とトピック10.4から始めます。相互参照が、必要な隣接トピックへ導いてくれます。
根拠と範囲についての注記#
本書の重心は英国のNHSと社会的ケアのシステムにあります。これらの仕事の進め方に関する公的な優れた指針の多くが、そこで書かれ、試されてきたからです。NHS Digital Service Manual、GOV.UK Service Manual、NICEのEvidence Standards Framework、医療・ケアの人材戦略などがその例です。とはいえ、原則は一国に限られません。安全性が重要で、公的な説明責任を負い、パートナーシップに依存する医療組織は、世界のどこでも同じ力学に直面します。本書がフレームワーク、統計、文書を引用する場合は、実在し確認できるものを引用しています。エビデンスが乏しい箇所では、確実性をでっち上げず、そのことを明記します。目指したのは、鑑賞するための本ではなく、行動に移せるハンドブックです。